倒産と廃業の実態 2019

本ページでは「中小企業白書 2019版」を元に、廃業と倒産の実態をお伝えします。

(文責:竹花利明)

倒産件数


この図は「東京商工リサーチ」による年ごとの「倒産件数」を示しています。

直近の2018年度は、8235件
リーマンショック後の15,000件に比べると、約半分に減っていることがわかります。

この数は「個人事業主と会社(法人)」を合わせた件数です。
今後の図も、同じく個人と法人を合わせた企業数となります。

また、この数は「負債総額 1000万円以上」の場合に限られています。

廃業件数


上記の図も同じく「東京商工リサーチ」によるもので、「休廃業・解散件数」です。

直近の2018年度は、46,724件。
近年は、その件数が増え続けています。

この数は「資産超過」すなわち、実質的な負債がない企業数となっています。

では、倒産数が約8000件、廃業数が4万件という数字は、正しいものでしょうか?

実は、もっと多くの企業が倒産・廃業をしています。
この廃業数には「負債過多」の件数が入っていないからなのです。

消滅企業数

では、倒産・廃業を含め、消滅した企業件数はどの程度になるのでしょうか。


「中小企業白書」の中で、この図こそ実際の「消滅企業数」を示しています。

2012年からの5年間で、

1)廃業が、83万件。
2)開業が、46万件。
3)減数が、37万件。(廃業数 ー 開業数)

5年で83万件の廃業。
1年間の平均で言えば、「17万件が消滅」しているということ。

すなわち、「倒産件数の20倍」は、消滅企業があるということです。

倒産・廃業の実態

改めて、前期3つの図を元に、倒産と廃業の実態をまとめてみます。

1)負債総額 1000万円以上の企業倒産は、8,000件。
2)負債のない企業の廃業は、46,000件。
3)消滅企業数は、17万件。

上記で明確にされていないのが、「負債総額が、0~1000万円未満」の消滅企業です。
その数は「11万件」に及びます。

「倒産」の定義は曖昧です。

「負債総額 1000万円未満」の消滅企業が、倒産に該当するか、廃業になるのか。
残念ながら、明確な定義はありません。

大廃業時代は、恐ろしいものか

NHKで、2019年10月6日に放送された「大廃業時代」。

この番組では「GDP22兆円の損失と、650万人の雇用が喪失される」との述べられました。
本当にそのようになるのでしょうか?

「中小企業白書」からは、違う結論が見えてきます。


2012年からの5年間で「37万者の企業が減った」とお伝えしましたが、
その結果「雇用は失われた」のでしょうか。

本図は、同じ5年間における「従業員数」の変化ですが、
全体を見れば、4614万人から4679万人と、「65万人増えている」のです。

37万者の企業が減った半面で、雇用は65万人増えているのです。

倒産・廃業は「淘汰」

規模別の増減を見れば明らかですが、「小企業で減り、中・大企業で増えている」のです。

この結果からみれば、企業数が減る「大廃業時代」が来たとしても、その分「小企業から中・大企業にシフト」できれば、雇用数が減ることはありません。

野口誠一会長は、次のように述べられています。

淘汰は自然の摂理であり、企業としてその運命は免れない。
むしろ、それによって企業も経済も発展してきたと言っていい。

企業淘汰のメリットは

第一に、バブル企業が退出し、健全な企業が残存者メリットを享受できることである。

第二に、日本経済の宿病ともいうべき設備過剰、供給過剰が解消できることである。

廃業すべき企業は、廃業すること。
倒産すべき企業は、倒産すること。

これによって、「企業も経済も発展する」。

日本全体として「弱みを捨て、強みを活かす」方向に行なら、
日本全体としての生産性も上がり、むしろ「GDPや雇用は増える」かもしれません。

廃業を推進する「八起会」

「大廃業時代」に対して、なんとか「廃業させずに存続企業を増やそう」という流れがありますが、「廃業すべき企業は、廃業したほうが良い」のではないでしょうか。

野口会長は、「倒産は早ければ、早いほど良い」と言われ続けました。

倒産という悲劇は、ある面で「早いタイミングで廃業せず、無理して事業を継続した結果」生まれるものでもあります。

八起会は、廃業推進派です。

特に、高齢社長で継承者のいない企業なら「倒産防止の最適策は、早めの廃業」との結論なのです。